2019年05月13日

PICKUP NEWS

(社説)生態系の保全 地球の悲鳴が聞こえる(2019/5/13朝日新聞)
 人間の活動のせいで、かつてないほどの勢いで地球の自然が損なわれている――。生物多様性と生態系の現状を科学的に評価する国際組織(IPBES)が、先日、新たな報告書を公表して警告を発した。
 7年前に設立され、132カ国が参加する。加盟国の政策づくりに資する提言をめざし、今回のリポートも、日本を含む各国の専門家145人が約3年をかけてまとめ上げた。
 そこに書かれたさまざまなデータからは、地球の悲鳴が聞こえてくる。
 たとえば、世界中に存在すると推定される800万種の動植物のうち、少なくとも100万種が数十年以内に絶滅する恐れがあるという。そのペースは、過去1千万年の平均の10〜100倍にあたる。
 背景にあるのは、人類による土地や海、河川の野放図な利用だ。この半世紀で、農林水産業の発展や都市の拡大により、陸地の75%と海洋の66%で環境が悪化した。温暖化や、海に流れ込んだプラスチックごみなども生き物の脅威となっている。
・・・ それは、人が生きていく基盤である農林水産業などが、早晩たちゆかなくなることを意味する。一例として報告書は、花粉を運ぶ昆虫が消えてしまうことで農業生産が毎年5770億ドル(約63兆5千億円)も減るリスクがあると指摘する。
 IPBESのロバート・ワトソン前議長は「経済や暮らし、食糧安全保障、健康などの基盤を私たち自身が侵している」と訴える。人間の生活は自然の恵みなしでは成り立たない。そんな当たり前の事実に、改めて目を向ける必要がある。
・・・ エネルギーや食料、水などの大量生産・大量消費を見直す。温室効果ガスを減らして地球温暖化の進行を抑える。脱プラスチックを進める……。どれも容易ではないが、成し遂げなければならない課題だ。
 来年、中国で開催されるCOP15では「ポスト愛知目標」が議論される。世界を持続可能な姿にするために、どんな戦略を描くのか。国際社会の覚悟が問われている。
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14011830.html?iref=comtop_shasetsu_01



(声)リニアよ、南アに穴を開けるな(2019/5/12朝日新聞) 無職 服部隆(静岡県 66)
 山を愛すること48年。私を育ててくれた南アルプスにリニア中央新幹線のトンネル工事が迫っている。「自分の腹に穴を開けられる思いだ」と山を愛する知人が語ったが、これは南アルプスに登ってきた者に共通する思いだ。

 大問題なのは、トンネル残土を無謀にも大井川上流部に投棄する計画と、掘削による枝谷の流量減少だ。とりわけ、JR東海の試算で「毎秒2トン」の減水は、南アルプス南部の生態系に深刻なダメージを与えるだろう。

 かつて谷でばったり出会ったツキノワグマは、清流をおいしそうに飲んでいた。荒川岳直下の谷でも2年前、ツキノワグマのふんを見つけた。生きものにとって水辺がいかに大切な場所かと思うと、心が痛む。JR東海の回復措置への言及も不十分だ。このままでは豊かな生態系が失われかねない。

 「速さ」のために、過酷な自然の中で生きる命を奪う権利があるのか。傲慢(ごうまん)のツケは必ず私たちに返ってくる。南アルプスに穴を開けてはならない。
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14010737.html?ref=pcviewpage



【社説】週のはじめに考える 国会よ、忘れては困る(2019/5/12東京新聞)
 国会は後半論戦に入りましたが、重要な問題が置き去りです。いまだ原因が分からない国の統計不正問題です。このまま放置されていいはずはありません。
 統計制度を支える専門家の気概を感じる動きがインドでありました。現地報道では一月、統計機関幹部が辞任した。辞任は、失業率上昇を示すとみられるデータの公表を政権が遅らせていることへの抗議だといいます。今は総選挙の真っ最中です。雇用創出を訴え政権に就いたモディ首相にとっては不利になる統計のようです。・・・ 
◆統計は社会映す「鏡」
 統計は社会の課題を可視化し、わが身を映す「鏡」の役を果たします。日本でも統計によって発見された社会の実相があります。
 「子どもの貧困」です。
 経済成長した社会では長らく貧困は存在しないととらえられてきました。ですが食事も満足に取れない子どもたちがいる事実が指摘されだすと、民主党政権時に子どもの貧困率を示しました。
 二〇〇七年調査で14・2%、七人に一人が世帯年収百三十万円以下で困窮している事実は衝撃とともに知られました。
 ところが政府統計の信頼性を揺るがす厚生労働省の毎月勤労統計不正が発覚しました。
 一八年一月から、統計の調査手法を変えたことで賃金が上振れした。アベノミクスの成果を強調したい安倍政権の関与があったのではないかと疑われています。
 もっと根本的な疑問は〇四年から、決められたルールに反する手法に変えていました。結果、統計への信頼を低下させたばかりか、雇用保険の失業給付などが過少になる影響もでています。
◆モリカケもどこかへ
 しかし、誰がどんな動機で不正を始め、なぜ長年放置され、その後復元を始めたのか。ここが不正の核心ですが、分からない。
・・・ 政権はキーマンの国会招致や資料提供などを小出しにして野党の追及をかわし続けました。野党も政権の関与の有無ばかりに関心が集中し、統計行政のあり方の議論は深まりませんでした。
・・・ 政府が国民にとって重要な統計を生かせなかった事例は日本も経験しています。
 太平洋戦争に向かう時代、専門家らが圧倒的な米国との国力差を統計で示しましたが、当時の軍部は軽視したとされます。
・・・ 国会で解明されていない問題はまだあります。
 森友学園への大幅値引きによる国有地売却は財務省の公文書改ざんまで発覚しましたが、政権の関与は不明です。加計学園問題も安倍首相の友人への厚遇が疑われていますが、疑惑のままです。・・・
 統計に話を戻します。
 政府統計はいわば公共財です。
 その重要性に早くから気づいていた人がいました。紀元前を生きた哲学者、ソクラテスだと明治期の教育者、新渡戸稲造が指摘しています。宮川公男(ただお)・一橋大名誉教授が著書「統計学の日本史−治国経世への願い」で紹介しています。
 政治の役割を富国強兵だと言う政治家志望の青年との対話でソクラテスがその具体策を問いますが、青年は答えられません。
 「『お前は何も知らぬではないか。それで富国強兵はできるか。政治の任に当ったらば兵の員数、富国の方法、財源など腹案がなければならぬ。街を歩き回ってなどいないで内に引込んで各国のことを調べたらよかろう』とソクラテスはいった」
 統計の役割を言い得ています。
◆歪んだ姿を正さねば
 十七世紀になると欧州で統計学が生まれました。そこから先人たちは鏡を磨き精度を高めてきた。
 不正の再発防止はその原因解明が行われてこそ可能です。国会は独自の調査委員会を設けるなど手だてがあるはずです。・・・
https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019051202000138.html


posted by オダック at 21:03| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: